電話する
トップ > 大切なこと・伝えたいこと(診療のあり方)
大切なこと・伝えたいこと(診療のあり方)

診療のあり方

◆症状のある方◆
胸焼け、むかつき、腹痛など消化器症状・腹部症状があれば、消化器の異常を念頭に診療を行います。
一見消化器症状に思えても、他領域の疾患が原因のことも珍しくありませんし、またその逆のケースもございます。
いずれにしても、症状に対して疾患を思い浮かべる際、思い込みは禁物です。

より好ましい状態を見定め治療目標とする際、何も手出しをしないときの経過(自然経過)が良好であるなら治療は不要となります。
もし症状が強ければ症状を和らげる処置を行います。短期間で自然に解決する問題、検査で異常値・所見があっても、実害がなく放置してよい場合も多いのです。
投薬・処置・手術など、医師による介入は、本来最小限であることが原則と考えております。

また、治療の目標は「生活の質(QOL:quality of life)」を高めることと、「寿命を延ばすこと」に集約されます。
延命が困難なときには、QOLが最大の関心事となり、延命が可能なら、QOLの低下をある範囲で我慢することもあります。
がんの診療を例にとした場合、死期の迫る末期がんに対して、辛い症状を緩和し、少しでも安楽な生活を考えることが前者に当たり、進行がんに対して根治の可能性があるなら、術後のQOLをある程度犠牲にしても大きな手術を行う場合が後者に当たります。

治療目標の根本に、生活の質の改善と寿命の延長を置いておくにしても、実際の診療場面では、診断された疾患をどう取り扱うか、疾患に対する治療目標をどこに置くか、それが当面の課題となります。医師が手出しをしなくても自然に短期間によくなる病態もしばしばです。
尚、治療を受けて頂くにあたり、治療目標に関する共通認識が必要であると思いますので、以下にご案内致します。

  1. 治癒
    疾患を完全に解消する。 → 良性腫瘍の切除・胆嚢結石に対する胆嚢摘出
  2. 緩解
    疾患の徴候は認めないが、治癒ではなく再燃の危険がある。 → 潰瘍性大腸炎
  3. コントロール
    治療継続を要するが、危険域を脱し許容できる状態にある。 → 糖尿病・本態性高血圧
  4. 対症療法
    疾病自体はさておき、症状の軽減を図る。 → 感冒・末期がん

生活の質とは

医師が患者様に対応するとき、患者さんの生活の質(QOL)を向上させることは大切な治療目標の一つであり、最大の関心事の一つです。
しかし、QOLを評価する決まった基準はありません。
いかに自分らしく生活できるか、その自由度が生活の質を測る尺度になるのだと思います。
患者様が「自分らしさ」を大切にされるなら、年齢・性別・性格・生活環境・仕事・趣味、更には人生観・価値観が、治療するのかしないのか、何を治療目標するのか、どんな治療方法を選択するのかなどに影響を及ぼすことになりますので、経過が長い病態や、負担の大きな治療を行う場合ほど、このことに配慮しなければならないと思います。

診療で欠かせないのが、不安・疑問に応えること

診療の根幹を成すのは、健康上の問題を解決することであると前述しておりますが、診療に欠かすことができない要素が、診療を進める中で生じる不安や疑問への対応です。
経過が良好で短期間の場合は、健康上の問題を解決すれば不安や疑問は解消すると思います。
しかし、経過が長く様々なことが起きる場合には、付きまとう不安や疑問に応えることが、医師と患者様の信頼関係を築き、円滑に診療を進める上で必要不可欠なことであると思います。

医学を学び、医療現場で経験を積んだ医師の知識・技術・経験・判断力による専門的パフォーマンスが、健康上の問題を解決に導く一方、患者様の抱く不安や疑問に応えるためには、優しさや思いやりを込めたサービス精神が必要であると思います。
診療の質は、いくら専門的パフォーマンスが優れていても、サービス精神を欠いていれば、診療本来の姿とは異なるものになってしまうことでしょう。

ページトップへ